息子が高校生のときの出来事です。
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「子どもの話をじっくり聴いて共感する」
これは子育ての基本中の基本です。
これをしっかりやるかどうかで、子どもの親への信頼度や安心度が変わります。
子どもが小学生のころは嫌な思いをしていたらすぐ分かったし、気持ちを察して「そうだねー、悔しいね、悲しいね」と共感の言葉をかけるのは割と簡単でした。
言葉もすぐ思い浮かんだし、子どもはすぐに元気になりました。
思春期になると、そうはいきません。
まず、基本的にいつもムッとした表情で口数も減るので、悩んでいるのかどうかもよく分かりません。
年齢的に悩んでいるのでしょうけど、どの程度深刻なのかは分かりません。
こちらが気を利かせて言葉をかけてみても、返ってくる反応はつっけんどんだし、ボソボソ低い声で言うので聞こえません。
聞こえないから「何?」「えっ?」と3回くらい聞き返すと、子どもは「だから、~って言ってるやん!」「もういい!」ってキレます。
こっちも「なんか心配して損した!」みたいな気分になるし、正直、共感どころじゃありません。
でもつい最近、そんな無愛想の根底には、やっぱり大きな悩みがあったことが分かりました。
部活(野球)で相当苦しんでいるようでした。
食欲が出ず、お弁当を残してくるのもそのせいだと言います。
何とか気持ちを楽にしてやりたいけど言葉が見つかりません。
とにかく話を聴いて共感することに集中しました。
が、共感言葉のバリエーションが少なすぎます。
「そっか……」
「ふーん……」
「そりゃ、悔しかったろうね」
「うん、腹立つだろうなぁ」
台所ですれ違ったとき、なんとか寄り添いたくて、黙って背中をポンポンとたたきました。
その瞬間、息子の表情がわずかに変わりました。
和らいだのではなく、ぶわっと涙がこみ上げたのをあわてて押し戻そうとして歯を食いしばるような表情。
すれ違いざまにそういう表情が見えて、あぁよっぽど辛かったんだな、悩んでたんだなと、切なくなりました。
息子は部活をやめる決断をしました。
部活が苦しくてやめるなんて「逃げ」だ、と批難するのは簡単です。
でもご飯もまともに食べられないくらい悩んでいるのなら、逃げて元気を取り戻してほしいとわたしは思います。
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当時高校生だった息子は、社会人になりました。
いったんはやめた野球を、いまは草野球チームで楽しんでいます。
チーム同士の交流もあっていろんな人と出会い、助っ人を頼まれてあちこち出かけています。
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